金曜日、それはサラリーマンにとって特別な日。
月曜日の朝から働き、その一週間の最後の日。
上司にはいびられ、得意先からは無理難題を押し付けられ、
残業もたくさん、出退勤は満員電車、まさしくストレス社会。
翌日からの二日間だけでも、それが解放される特別な日。
私は寄り道せずに家に帰る
「ただいま」
24歳男の一人暮らしの部屋。
無論、返事はない。
虚空の部屋に明かりをつける。
洗い物が残っている台所を横目に、早速スーツを脱ぐ。
「早くビール早くビール」
呪文のように唱えたまま、冷蔵庫へ。
癒しの元気ドリンク、ビールが「おかえりなさい」と囁いてくれているかのように待っていた。
プシュッ
ゴクッ
プハァー
世界で最も心地の良い三拍子だ。
仕事が終わった一週間、疲れた体と心にキンキンのビール。
よくある光景ながらも、至福のひと時。
幸せだ。
幸せなんだ。
気持ちよくもう一本ビールを開ける。
「金曜日、一週間の終わりのご褒美だ」
新日本プロレスワールドを見つつのビール。
少し酔いは周って、気分は夢心地。
「寝落ちするの前に風呂入らなきゃ」
誰もいない部屋で呟く。
一人暮らしが長いと、独り言ももう染み付いている。
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ちょうど良いお湯加減に調整し、シャワーを浴びる。
私はシャンプーからするタイプだ。
“上から洗ったほうが綺麗に洗える”そんなことを誰かから聞いた気がする
気持ち良い。
ほろ酔いの身体に染み渡る。
髪を洗ってかきあげる。
ふと鏡が目に入った。
酔 い が さ め た
見事なM字の形成。
数年前のおでこ幅は指3本分だったはずだ。
それがどうだろう、今や4本だ。
どうやら、頭皮がやばいかもしれない。
そんなことを思った金曜日。
抜け毛の原因はたくさんあるらしい。
でもなんとなく感じるものがある、そう、まさしくストレス社会。
そんな時代に私は生きている。