2019年3月1日に公開の『映画ドラえもん のび太の月面探査記』
毎年公開しているドラえもんの映画(=ドラ映画)……実は私、ドラえもんの映画としては数年ぶりに劇場へ鑑賞しに向かいました。
その理由は本作の脚本が、直木賞も受賞している日本を代表する女性小説家である辻村深月さんだからです。
これはきっと良い映画だろう
なんて気持ちをもったので鑑賞しに行きましたが、事前の想いを上回る感動を届けてくれる映画でした…!!
そして、大人にこそ観てほしい、伝わってほしいメッセージがあるのではと強く感じました。
今回は『映画ドラえもん のび太の月面探査記』の感想をお届けします。
※ネタバレを含みます
あらすじ(ネタバレあり)
野比家に流れるテレビのニュース…それは月面探査機が月面の白い影を捉えたということ。
そのニュースを観たのび太が学校に行くと、すでにクラスメートは「未確認生物」「何らかの影」と意見が二分にされて討論されていましたが…のび太は「月に住むウサギだ!」と言い張り、皆に笑われます。
そしていつものパターン(?)ドラえもんに相談したところ『異説クラブメンバーズバッジ』という秘密道具を…これが異説とされていることを望むとそれが現実の世界に存在するようになるというもの。
のび太とドラえもんは、「月にはうさぎがいる」という異説を現実にし、月の裏側にウサギ王国を作ることに。
『動物ねんど』という秘密道具でウサギを生みだし、名付けられた『ムービット』
少し時間をおいて再び月面に行くと、なんとムービットたちがすごく増え、そして本当に自分たちで王国を作っていたのです。
時をほぼ同じくして、のび太の学校にルカという転校生がやってくるのですが…超能力のような不思議な力を使います。
そんなある日、のび太がしずかちゃん、ジャイアン、スネ夫にウサギ王国に行こうと誘っていると、ルカがやってきて「自分も行きたい」と…のび太は一緒に行こうと、みんなと一緒に早速月のウサギ王国に向かいます。
ウサギ王国で楽しく過ごしていたところ、地球人とは違う人間と出会います。
その名は『エスパル』、1000年前にカグヤ星という星で、天才科学者により生み出された超能力のような不思議な力を使う存在です。
のび太が出会ったルカもエスパルの一人でした。
彼らの故郷であるカグヤ星は、エスパルが生み出すエーテルという不思議な力を使った破壊兵器を使用し月を破壊したところ、その隕石がカグヤ星に降り注ぎ死の星となってしまったとのこと(住民は苦しい生活を強いられています)
のび太たちとエスパル達は打ち解け楽しく時間を過ごしているのですが、そこに謎の宇宙船が現れ…カグヤ星からの追手が襲ってきました。
その強い力に、為す術もなくエスパル達は捉えられ、カグヤ星に連れて行かれました…..からがらどこでもドアで地球に戻ってきたのび太たち…
のび太は決意します、「必ず助ける」と…「厳しい戦いになる」とドラえもんは言うものの全員がエスパルたちを救うことを決意し、月面に向かい、そしてカグヤ星に向かっていきます。
カグヤ星に着くと、捉えられているルカたちを始めとしたエスパル達を救出…と思いきや、敵の首領である『ディアボロ』が現れ、圧倒的な力で再びエスパル達を捉えて、そしてのび太やドラえもんを窮地に陥れます。
しかし、さまざまな助け、ルカの力によりディアボロを倒すことに成功し、闇に覆われていたカグヤ星にも光が戻ったのでした。
全てのシーンに意味のある無駄のない脚本
“全てのシーンに意味のある無駄のない脚本”
こう言うと「他の映画では無駄なシーンあるのかよ」なんて言われそうですが、個人的には邦画・洋画、実写・アニメ関係なく、「このシーンいらなくね?」なんて思うことが多々あります。
しかし、本作についてはそれが全くないのです。
最初は、ただただちょっとだけクスりと笑えるようなシーンなのかなと思っていた部分でも、それはが大事な伏線であったと気付かされます。
例えば、のび太ににているうさぎの『ノビット』にまつわるシーン。
ノビットは少しばかり発明を続けていますが、それは全部まともには動かない物ばかり…。
車を開発したと思えば、ハンドルで左右は逆に行くしアクセル踏むと後ろに走り出すしで、「あべこべ」の発明しかしません。月面の車の運転でもぶつかりまくってハチャメチャなだけ…そんなシーンでした。
しかし、物語終盤…最終的な敵である『ディアボロ』と戦っているドラえもんやのび太を始めとしたメンバーが捕らわれ、今にもマグマに落とされそうな大ピンチ。
そこへ救出に来たのが、しずかちゃん、そしてムービットたちでした。
異説の世界にしか存在しないムービットたちが、なぜ現実世界に現れることができたのか……それは、ノビットが『通説クラブメンバーズバッジ』を発明したから。
ウサギ王国で『異説クラブメンバーズバッジ』を拾ったノビット(のび太が落としたバッジを不思議そうにノビットが見つめるシーンも一瞬描かれています)。
これを元に「異説のあべこべ(=通説)を作り異説の世界から痛切である現実にやってこられるようになったのです。
ノビットが、あべこべなモノしか発明できないのは、まさしくここにつながってきたのです。
この瞬間、個人的にはストーリーの作りに感動しました。
これ以外にもさまざまな後々につながるシーンや言葉があるので、見逃せるシーンがありません。
大人こそ観てほしい、忘れているモノを気づかせてくれる言葉
最後の敵であるディアボロの正体は、なんと人工知能。
しかも、カグヤ星が破壊された1000年前から存在し続けるまさしく破壊の化身。
カグヤ星の人たちが作りだした存在が、1000年間恐怖と貧困へと支配するという皮肉な結末。
まるで、今の世の中のそう遠くない未来を描いているのではないかな、と。
自らが正しい判断をしていると言うディアボロに、ドラえもんは叫びます…「想像力は未来だ。人への思いやりだ。それを諦めた時に破壊が生まれるんだ」と。
同じく人間に生み出されたロボットであるドラえもんとディアボロ…未来や可能性への期待、人間という存在への希望を知っているか否かなのでしょうか。
でも、このドラえもんの発言…今の大人にこそ伝わってほしいと思わずにはいられませんでした。
テクノロジーの発展でより便利になり考えることも端的に済むようになっていることはもちろん、「人への思いやりの欠如による悲しい出来事」がありふれている現状を見ると、まさしく破壊(物質だけでなく)が横行しているのではないでしょうか。
大切なことを、ディアボロという悪を通して、我々に訴えかけてくれていると感じざるを得ません。
のび太の友達への想い×エスパルが選んだ本当に大切な生き方
のび太の真っ直ぐな想いってすごいですよね。
エスパル(特にルカとの関係が深く描かれているので、以後はルカとします)は、1000年も生きている通常の生物として考えると孤独な存在なのです。
しかも11人しかいないため、永らくの時間同じ関わりだけ(外界とは関係を持たず)でしか過ごしていないため、”友達”という存在を知らなかったわけです。
普通に泣いたよね…
数年ぶりに映画館へ鑑賞しに行ったドラえもん。
暦上の休日に行ったせいか、周りには親子連れの方が多くいらっしゃいました。
(実際、自分の左右も親子連れで)
そのような中でも、周りを気にしないほど見入ってしまう本作…ラストのシーンである『のび太たちとルカを始めとするエスパルたちの別れ』は、どうしても感情移入して涙を流してしまいました。
無駄のない脚本なんて話をしましたが、のび太とルカ、また他のメンバーたちをエスパルたちの思い出の時間やそれぞれの”友達への想い”なんていうものが自然に描かれているシーンもあったので、悲しい気持ちになるには十分すぎるほどでした。
映画に込められたメッセージ、そして物語としても、大人がかなり楽しめる『ドラえもん のび太の月面探査記』
ぜひ劇場で観ることをオススメします!